【マッチレポート】
「試合に出ていない選手も含めて、全員で戦っている」。プレーオフファイナルラウンド第一戦後、キャプテン金山友紀が口にした言葉だ。
東京から500km。完全アウェイのスタジアム内に町田コールが響き渡る。
同点で試合が終了すれば、町田の挑戦はそこで終わる。2017年3月3日定刻19時、まさに「絶対に負けられない戦い」の試合開始を告げるホイッスルが岸和田市総合体育館内に鳴り響く。
「前半戦」
最初の決定機を作り出したのは町田。室田祐希のドリブル突破からゴール前でパスを受けた中井健介が、ゴレイロ柿原聡一郎と1対1のチャンスを作り出すが得点を奪うには至らない。
次は大阪が町田ゴールに襲い掛かる。チアゴからのパスを受けた田村友貴がイゴールと1対1の場面を手に入れるが、今後は町田の守護神がファインセーブでゴールを許さない。
最終ラウンド第二戦へと駒を進める為には勝利するしかない。町田が手に入れたいものは常にリードする展開だ。
8分26秒、プレッシングをかける大阪選手たちの裏に一瞬スペースが出来る。そこを見逃さないのがジャッピーニャだ。裏へと飛び出す感覚、スピード、そしてボールを受けながらチアゴのプレッシングをガードするという巧みなコントロール技術。完璧な崩しから最後は右足を振り抜き、大阪ネットの形を変える。先制点を奪ったのは町田だ。
【大阪0−1町田】 <8分26秒:本田真琉虎洲>
更に11分51秒にもジャッピーニャが魅せる。1点目同様、彼は裏に一瞬だけ出来たスペースを見逃さない。完璧なタイミングだ。
そのタイミングに滝田学がパーフェクトなパスを出す。今回のシーンでも華麗なコントロールでゴレイロ柿原をかわし、倒れこみながら放った右足シュートが大阪ゴールへと吸い込まれていった。
【大阪0−2町田】 <11分51秒:本田真琉虎洲>
町田の勢いは止まらない。大阪陣内でボールを奪った室田祐希がドリブル突破から左足を振り抜く。室田のシュートは懸命に伸ばした柿原の左足横をすり抜け、サイドネットに突き刺さった。
【大阪0−3町田】 <13分49秒:室田祐希>
前半スコア【大阪0−3町田】
「後半戦」
驚異的な得点力でリーグ戦優勝を果たした大阪がこのまま黙っているはずがない。後半戦は押し込まれる展開で試合が進む。
スタジアムを見回してみる。観客席の大半を占める色は何色に見えるのだろう? 贔屓目にも「イエロー」と表現することは出来ない。大阪のホームカラー「オレンジ」だ。
観客席をオレンジに染めたサポーターたちの期待にアルトゥールが答える。カウンター攻撃から自らのドリブルで持ち込み、強烈な右足シュートで反撃の狼煙をあげる。
【大阪1−3町田】 <24分41秒:アルトゥール>
大阪のナンバー5が会場に火をつけた。サンバのリズムは軽快さを増していく。会場のボルテージが上がる中、27分31秒、町田は田村友貴に1点差へと詰め寄られてしまうゴールを許してしまう。
【大阪2−3町田】 <27分31秒:田村友貴>
同点で試合が終了すれば町田の挑戦は終わる。第二戦の会場の門は開かない。
大阪の攻撃が続く。アルトゥール、チアゴ、小曽戸允哉に決定機を作られながらも、町田は堅守でゴールを奪わせずに時間が経過していく。
残り時間2分59秒、大阪はパワープレーを開始する。得点力のある大阪を相手に「残された時間は長い」と言っても過言ではないだろう。
ここはアウェイ大阪だ。けれども、スタジアム内にはペスカドーラコールが聴こえてくる。ワンプレーごとに町田選手、そして大阪へと駆けつけてくれたサポータたちがガッツポーズを繰り返す。
「後半戦は押し込まれ、苦しい展開だったけれど、最後まで集中を切らさずにディフェンスが出来た。このチームはそういう力を持っている」。試合後の岡山監督のコメントだ。
プレーイングタイム40分が終了する。大阪の猛攻を凌ぎ、町田は最後の舞台に立つ権利を手に入れた。
舞台の場所は大阪府岸和田市総合体育館。2017年3月4日(土)、10年目を迎えたFリーグ正真正銘の最終節だ。
後半スコア【大阪2−0町田】
合計スコア【大阪2−3町田】
「勝て! ペスカドーラ町田」
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写真:橋本健(はしもとたけし)
記事:早川治(はやかわおさむ)
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