【マッチレポート】
「前半戦」
「頭も身体も固かった」。岡山監督が過去によく口にした言葉だ。開幕戦やプレーオフ進出決定戦、そしてプレーオフ。町田が悩まされ続けた悪癖は完全に姿を消す開幕戦となった。
開幕戦というプレッシャーの中でも身体が思ったように動いている。神戸陣内からハイプレッシャーをかけ続け、日根野谷建がボールカットに成功すると、そのこぼれ球を拾った森岡薫がドリブルで仕掛ける。試合開始から僅か53秒、神戸ディフェンス2人をかわしてから森岡が放った強烈な右足シュートは、神戸ゴレイロ福良一至のブロックを撥ね除け、ゴールへと吸い込まれていった。
【町田1−0神戸】 <53秒:森岡薫>
14分、今度は神戸陣内左サイドで日根野谷と室田祐希が魅せる。日根野谷からのパスを受けた室田が切れのある反転で神戸ディフェンスのプレスをかわすと、左足で中央へと走りこむ日根野谷へとパスを出す。日根野谷が倒れこみながら放ったシュートが神戸ネットの形を変えた。
【町田2−0神戸】 <13分40秒:日根野谷建>
その後も町田は決定機を作り続けた。ピレスイゴールからのパスが裏のスペースへと抜け出した中井健介へと通る。
ゴレイロと1対1の場面を手に入れた中井だったが、このシュートは枠を捉えることが出来ない。
その後もカウンターから中井、金山友紀がゴールへと向かい、決定的なシーンを作り出すが、得点には至らずに前半戦が終了する。
前半スコア【町田2−0神戸】
「後半戦」
後半に入っても町田ペースで試合が進む。その中でも際立った存在感を見せ続けたのは、今シーズンからキャプテンマークを左腕に通すことになった森岡薫だ。
森岡は自身の突破からのシュート。そしてパサーとしても決定的な場面を作り続けた。
森岡だけではない。昨シーズンから町田の一員となった日本を代表するドリブラー、室田も森岡とのコンビネーションプレーで神戸ゴールへと向かう。
後半開始早々、自陣でボールを奪った森岡がドリブルで持ち込むと、3人に囲まれながらもゴール前へと走りこんだ室田へとパスを通す。室田が右足で合わせたボールは僅かに枠を捉えることが出来ない。しかし、2年目を迎えたホットラインの成長度を垣間見るシーンのひとつだった。
町田のパフォーマンスは良かった。しかし、神戸ももちろん黙ってはいない。齊藤秀人のボレーシュート、稲田瑞穂からの強烈な左足パスにヘディングで合わせようとゴール前のスペースへとフリーで飛び込む岡崎チアゴ。
今試合、危険なシーンは数多くあった。あと10cmパスの高さが変わっていたら、あと数センチシュートの角度が異なっていたら、町田ネットは揺れていたかもしれない。「きっかけ」を神戸が掴んでいれば、試合内容はまた違ったものになっていたかもしれない。しかし、その「かもしれない」を現実にさせない為に、選手たちは「あと数センチ」のプレッシャーにこだわったプレーをし続けるのだ。
33分、大きな追加点がスコアボードに刻み込まれる。原辰介がドリブル突破から強烈なシュートを放つ。ゴレイロの前でその軌道を阻止した齊藤の身体を離れたボールがこぼれた先にいち早く走りこんだのは金山友紀だった。
金山が豪快に振り抜いた左足シュートが神戸ネットの形をくの字に変える。
【町田3−0神戸】 <32分26秒:金山友紀>
失点直後、神戸はパワープレーを開始するが、攻撃権を奪い返した町田が丁寧にボールを動かし、神戸にパワープレーを再開するチャンスを与えない。神戸にとっての大きなチャンスを得る為の時間が無くなっていく。
傍から見ていれば、パワープレーというものは実施しやすく見えるのかもしれない。だが、実際は違う。「ある条件」が整わなければパワープレーは実施出来ない。ボールを失ってしまう可能性が高い状況であれば、それは出来ないのだ。
なかなか思ったようにパワープレーを実施出来ない状況が続いた神戸だったが、ボールを奪い返した後には決定的なチャンスを作り出していた。
中でも決定機を量産したのは、10番の稲田瑞穂。彼が放った強烈なシュートがクロスバーを叩いた回数は2回。いずれも素晴らしいシュートだったが、ネットを揺らすには至らなかった。
「ペースカドーラ!!」「ペースカドーラ!!」サポーターの声がアリーナに響き渡る。我慢の時間帯に選手の背中を押し続けるのは、やはり「心からの応援」だ。
サポーターの熱い思いは結果を引き寄せる。神戸のパワープレーが続く中、貴重な追加点を奪ったのは我慢を続けた町田。
39分05秒、神戸の攻撃を奪ったイゴールが両手で丁寧に森岡の胸へとパスを出す。
巧みなボディーコントロールで左足へとボールを動かした森岡が放った左足シュートが神戸ゴールへと吸い込まれていく。パワープレー返しが成功し、町田が貴重な4点目を奪うことに成功した。
【町田4−0神戸】 <39分05秒:森岡薫>
残り時間7秒、神戸の勝利は絶対にない。ゴールが近いフットサルという競技ですら、「絶対に」という言葉を使っても良い残り時間だ。
それでも神戸選手たちは貪欲にゴールへと向かう。リーグ戦は始まったばかりだ。昨シーズンの神戸の総ゴール数は「102点」。1点ずつの積み重ねが成果を生む。貪欲に、ひたむきに挑戦を続ける選手の気持ちが町田の完封勝利を阻む。
残り時間7秒、岡崎チアゴのシュートが町田ネットの形を変えた。
【町田4−1神戸】 <39分53秒:岡崎チアゴ>
後半スコア【町田2−1神戸】
合計スコア【町田4−1神戸】
・・・・・
開幕戦勝利後のインタビュー、金山友紀のコメントを掲載する。
金山:今シーズンの目標は優勝。それしかないです。
金山:今日もたくさんのサポーターの方々が会場に足を運んでくれました。黄色のユニフォームやタオルマフラーを見につけてくださっている方もいますが、他にも黄色のものを身につけてくださっている方々もたくさんいます。皆さんの応援が力になっています。有難うございます。
今シーズンの自身初ゴール後、サポーター席へ感謝の気持ちを込めて送ったガッツポーズ。そして、試合終了後の丁寧な感謝の言葉。彼のようなベテランを見ながら若手が育っていけば、町田は更に強いチームへと成長していくに違いない。
2017−2018シーズン、幸先の良いスタートを切ることが出来た。さぁ、目的地へと向かおう。
今シーズンも昨シーズン同様、同じ言葉でマッチレポートを締めくくっていきたいと思う。
「勝て! ペスカドーラ町田!」
・・・・・ 第1節を終えた時点での順位等
順位:12チーム中3位
勝ち点:3 − 首位フウガドールすみだ(以下すみだ):3
勝敗数:1勝0分0敗 − すみだ:1勝0分0敗
総得点数:4点 − すみだ:9点
総失点数:1点 − すみだ:1点
得失点差:+3 − すみだ:+8
写真:橋本健(はしもとたけし)
記事:早川治(はやかわおさむ)
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