【マッチレポート】
第24節府中アスレティックFC戦。今シーズン3度目の戦いの舞台は町田市立総合体育館だ。今季、府中との対戦成績は2戦2勝と勝ち越しを決めているが、2015年7月5日に行われた第2回対戦後、府中はオーシャンカップ決勝で名古屋オーシャンズを6対0で破り、優勝という最高の栄冠を手に入れている。
経験豊富な選手が揃い、技術、パワー共にハイレベルなチームは、「優勝」という貴重な経験後、どのような進化を遂げているのだろう?
上位チーム順位の入れ替わりが激しい、混沌とした状況の中、変動なく2位という好位置をキープし続けている町田にとっての正念場が続く。
最後の最後まで何が起こるか分からない厳しいシーズンだが、このチームを心底愛する人々が数多く集まるこのピッチならば、40分後には最良の結果を手に入れることが出来るはずだ。
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筆者は前節マッチレポートの中で「このチームを支える数多くの大切な人々」について執筆した。今試合、数えきれない「チームを支える人々」の中のひとりが、陰でファインプレーを見せ、貴重な得点シーンをサポートをする。「さすがはホームゲーム」というシーンのくだりを執筆出来ることも楽しみにしながら、第24節を振り返っていきたいと思う。
スピードスター後継者NO13中井健介が、左サイドからのドリブル突破で府中ゴールへと向かう。今シーズン、確実にチャンスメーカーへと成長を遂げた中井が右足でシュートを放つ。
町田は積極的に相手陣内からプレッシャーをかけ、府中選手たちのミスを誘う。立ち上がりのペースは上場だ。スコアレスのまま、セカンドセットメンバーたちがピッチへと足を入れた。
今試合初の決定機がやって来る。中央でボールを持ったNO10ボラからのボールを左サイドで受けたNO8滝田学がDFをかわし、右足で強烈なシュートを放つが、ポストに阻まれ得点には至らない。
その後は互いに譲らない展開となった。町田がNO1イゴールを加えたパワープレーで府中ゴールへと向かえば、府中NO10山田ラファエルユウゴが強烈な右足シュートを放つ。
府中ゴレイロNO96クロモトも自身のドリブルでカウンターを仕掛け、数的優位状況を作り出すが、ボラが懸命に戻り、決定的な場面を作らせない。
流れは悪くなかった。だが先制点を奪ったのは府中。NO5皆本晃が自陣からドリブル突破を仕掛け、町田ゴールへと向かう。皆本のドリブル突破は止まらない。町田陣内右サイドで彼の右足を離れたボールが町田ゴールへと吸い込まれた。
【町田0−1府中】<7分45秒:NO5:皆本晃>
ボールを動かしながらチャンスを窺う町田。次の決定的シーンを作り出したのは、滝田、中井コンビだった。中央ゴール前へと中井が飛び出すと、その位置にピンポイントで滝田がスルーパスを出す。普通の選手では、まず通らない角度のパスだが、それを実現させることが出来るのが中井健介の俊足だ。
会場が沸くが、クロモトが好判断で前へと出て、中井にシュートを打たせない。
チャンスメーカーコンビの勢いは止まらない。中井は、滝田とのコンビプレーで右サイドを突破すると、今度は自らのシュートではなく、中央へと走り込んだNO7金山友紀へとパスを出す。
ボールを受けた金山が右足でシュートを放つが、枠を捉えることが出来ない。
町田の攻撃が続く。中央からボラがシュートを放つが、クロモトが弾き返す。しかし、チャンスはまだ続いた。
弾き返されたボールに、ゴール前へと詰めていたNO16篠崎隆樹がNO6本田真琉虎洲へとパス。本田はそのボールに右足で合わせるが、ボールはゴール右へと外れてしまう。
次は本田自らの突破だ。左サイドをドリブルで突破しようと試みた本田を府中選手が一度は防ぐが、そのボールを再度彼は奪い返す。
振り抜かれた右足を離れたシュートが府中ゴールへと向かう。クロモトの手は届かない。しかし、またもポストが行く手を阻む。
その後もチャンスは作り出せているが、ネットが揺れない展開で試合が進んだ。
15分、町田岡山監督がタイムアウトを申請する。「勝て! ペスカドーラ町田」のサウンドが流れると、サポーターは黄色のタオルを左右に動かし出す。左右に、上下に、様々な方向へと動くタオルが、最高のホームの雰囲気を作り出す。
ビハインド状況が続く。なるべく早い時間帯で同点に追いつきたい町田は、NO2日根野谷建が強烈なシュートを放つが、またもクロモトが立ちはだかる。
府中NO14永島俊がドリブル突破から町田ゴールへと向かえば、イゴールがファインセーブでゴールを許さない。
ボラからのシュート性ボールに本田が触れ、角度を変える。クロモトが行く手を阻むが、弾き返されたボールを再度ゴール方向へと本田が押し込む。しかし、またもポストに弾き返されてしまう。
前半の残り時間が無い。町田はイゴールを加えたパワープレーを開始する。
府中選手の堅い守備の前になかなか決定的シーンを作れなかった町田だったが、イゴールのシュートから得たコーナーキックが、前半最後の同点劇への望みを繋ぐ。
残り時間は2秒。ここから得点シーンが生まれるのがフットサルの魅力のひとつだ。
右サイドからのコーナーキックの場面でのキッカーは名手篠崎隆樹。ペナルティーエリア外からゴール前へと走り込んだ金山へとピンポイントのパスが通る。完璧なスピードと角度だ。金山が中央で合わせたボールが、府中ネットに突き刺さった。同点弾だ!!
【町田1−1府中】<19分59秒:NO7:金山友紀>
前半スコア【町田1−1府中】
「後半戦」
後半最初の決定機を作り出したのは町田。中央で得たフリーキックのキッカーはボラ。左サイドでボラからのボールを受けた滝田がシュートを放つが、今度はクロスバーがゴールを許さない。
次は府中が決定機を作る。左サイドから永島が放った強烈なシュートをイゴールが弾く。そのボールへとつめたNO25完山徹一がボールを押し込もうとするが、またもイゴールがスーパーセーブで追加点を許さない。左手一本でボールの軌道を変えた守護神が吠える。
スーパーセーブに応えようと、チャンスメーカー中井が右サイドを突破する。府中ディフェンス2人を置き去りにした突破からのシュートに会場が沸く。
その後も町田の時間が続いたが、得点には至らずに試合は進んだ。
逆転弾を待ちわびたホームの観衆が立ち上がるシーンがやって来る。33分、府中の攻撃を凌いだ町田は、素早いカウンターから府中ゴールへと向かう。ボラからのボールを左サイドで受けた滝田が右足を振り抜くと、府中ゴールのサイドネットが大きく揺れた。待望の逆転弾がスコアボードの点灯表示を変える。2対1。今試合初のリード状況に会場からは大歓声が沸き起こった。
【町田2−1府中】<32分13秒:NO8:滝田学>
36分、中井が倒されて得たフリーキックの場面で金山が篠崎のもとへと向かう。いくつかの言葉を交わした後、金山はピッチの外へと姿を隠した。
ホイッスルが鳴り、試合再開の信号が送られると、ポスト脇へと隠れていた金山がゴレイロクロモトの前へと現れる。キッカー篠崎とゴレイロの間に一瞬入り、ボールを見失わせた後、彼はポジションを変えた。その位置に最高のパスを出す人、それが篠崎隆樹だ。
篠崎からのボールの角度を変えた金山のシュートがゴールへと吸い込まれていく。完璧なセットプレーでリードを2点に拡げることに成功した。
【町田3−1府中】<35分54秒:NO7:金山友紀>
失点直後、府中は永島をゴレイロにパワープレーを開始する。「ペスカドーラ! ペスカドーラ!」選手を鼓舞するサポーターの声援が会場に響き渡る時間が続いた。
残り時間は53秒。府中永島がシュートを放った瞬間、ボールの向かう方向を瞬時に理解したボラの左足が府中ゴールへと向かう。イゴールにも全速力で走るボラのことが見えていた。この場面で一番大切なこと、それはまず、アウトボールになったボールを素早く手に入れ、ゴール前へと走っているボラへとパスを出すことだ。
残り52秒、イゴールがボールを求める。その瞬間、丁寧なアンダースローからのボールが、イゴールに向かっていた。そう、今試合、影の立役者は「ボールボーイだ!!」
アウトボールになった後、イゴールの手元へとボールが戻ってくるまでの時間は僅か0コンマ5秒。「ボーイ」の完璧な判断と技術からフィードされたボールを受けたイゴールが豪快に右手を振り抜く。守護神はオーバースローだ!!
残り50秒、シュートが放たれてから僅か3秒後の未来。ボラがヘディングシュートでゴールを決めるシーンが現実となった。
【町田4−1府中】<39分50秒:NO10:ボラ>
ボラがヘディングシュートをした場面、府中NO12小山剛史は、彼のすぐ脇まで戻っていた。あと0コンマ5秒、イゴールのスローが遅れていたら、あの得点シーンは生まれていたのだろうか?
海外の試合では、ホームのチームを勝たせたいがあまり、ボールボーイが遅延行為を行う事は稀ではない。時にはホームの英雄たちを応援する少年が、号泣しながらボールを抱き抱え、アウェイの選手にボールを渡さないことだってある。
その時間はもちろんアディショナルタイムになる。だが、瞬間瞬間を極度の緊張の中で乗り越えている選手たちにとって、その時間は「自分のペースを乱す」には十分すぎる時間となるだろう。
「さすがはホーム!!」そう叫びたくなるようなシーンだったと言えるのではないだろうか?
40分には、府中山田にゴールを許してしまうが、2点差のまま試合終了を告げるホイッスルが鳴り響く。今試合も苦しい内容だったが、今季府中との対戦成績は3勝0敗。最高の結果を得ることが出来た。この素晴らしい結果も、「このチームを支える数多くの大切な人々」あってこそのものだろう。
【町田4−2府中】<39分38秒:NO10:山田ラファエルユウゴ>
リーグ戦の残り試合数は「9」。25節、26節は名古屋セントラルでの2連戦。セントラルでの対戦相手は、シュライカー大阪、フウガドールすみだ。両チーム共に上位争いで競り合っている強敵だ。
シーズンもいよいよ佳境。最後の最後に今までの努力が報われる瞬間が来る様、的確な判断、分析、実行、そして誰にも負けたくないという強い闘志を持ち、すべての対戦に臨むのみだ。
「勝て! ペスカドーラ町田!」
後半スコア【町田3−1府中】
合計スコア【町田4−2府中】
写真:橋本健(はしもとたけし)
記事:早川治(はやかわおさむ)
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