【マッチレポート】
「フットサルという競技の面白さの一つに『相手に問題を提示し、それにどう応えるか』という駆け引きがあります。試合前であれ、試合中であれ、相手が策を練ってきたと感じた時、私自身はワクワクしますし、監督としては、そんなやり合いが楽しいと思っています。また、それは見ている人達にも伝えたい部分です。」
上記は岡山孝介監督が以前コメントした内容だ。各チームの監督は、日々分析を繰り返している。自チームの良かった点、悪かった点。相手チームのストロングポイント、ウィークポイント。対戦前には相手チームのスカウティングを行い、次節ではどのようなメンバーを組み合わせるべきかについて考える。
目を瞑れば、選手たちの顔が頭に浮かんでくる。ピッチの中では架空の試合が行われている。良いシーンばかりではない。考えもしなかった失点パターンや敗戦パターンが突然横槍を入れてくることだってある。監督やコーチの想像力が老巧であればあるほど、チームは更なる成長を遂げることが出来る。
ファーストセットメンバーがピッチに向かう。ＮＯ１イゴール、ＮＯ２日根野谷建、ＮＯ６本田真琉虎洲、ＮＯ９横江怜、ＮＯ１０ボラ。イゴールを除けば、いつもとは違うメンバーだ。
岡山監督が須賀監督に問題を提示する。駆け引きの始まりだ。
すみだが町田陣内から激しいプレスをかけてくる。プレスを回避し、ゴールへと向かいたい町田だったが、なかなか良いシーンを作り出すことが出来ない立ち上がりとなる。
リズムを掴みたい町田はイゴールを加えたパワープレーも攻撃のバリエーションに加えるが、ボールを奪ったすみだゴレイロＮＯ２１清家大葵のパントキックが、あわやパワープレー返し成功かと思われるシーンを作り出す。
すみだペースと言ってもよい立ち上がりとなったが、少しずつ町田らしさがピッチ上で体現され始める。横江が抜群のキープ力で攻撃権を失わない。すると、ボラの個人技からのシュートがすみだゴールへと向かう。枠を捉えることは出来なくても、その「きっかけ」にサポーターが大きな声で選手たちを鼓舞する。「ボーラッ！！ ボーラッ！！ ボーラーッ！！」
「きっかけ」は町田のリズムをアップさせる。セカンドセットで入ったＮＯ８滝田学がカウンターからすみだゴールへと向かうが、ゴレイロ清家がファインセーブでゴールを許さない。
町田の攻撃が続く。すみだ陣内でボールを奪ったＮＯ７金山友紀がシュートを放つが、この場面でも清家が立ちはだかる。
ボールを動かしながらチャンスを窺うすみだのボールを奪ったスピードスターＮＯ１３中井健介が、俊足を活かしたカウンターでゴールへと向かうが、この場面でも清家が好判断のカバーリングでシュートチャンスの芽を摘んだ。
互いに譲らぬ展開が続く中、先制点を奪ったのは町田。１１分、チャンスは作り出すものの、再三清家のファインセーブに阻まれた中井の右足を離れたボールがすみだゴールに突き刺さった。
【町田１－０すみだ】<１０分０６秒：ＮＯ１３：中井健介>
すみだ選手たちも魅せる。日本代表候補のＮＯ７稲葉洸太郎、ＮＯ１４西谷良介のシュートがゴールへと向かうが、イゴールを中心とした堅守でゴールシーンを作らせない。
ボラがシュートを放てば、すみだＮＯ１１清水和也もやり返す。町田陣内でキックインの場面を得れば、須賀監督がタイムアウトを申請し、入念に練られたセットプレーからの突破で町田ゴールへと襲い掛かる。
「ひとつひとつのプレーに、深く考えられた上で決定された意図」を感じることが出来る見応えあるプレーがぶつかり合った。
前半スコア【町田１－０すみだ】
「後半戦」
後半開始早々の２０分１９秒、町田ネットが揺れてしまう。町田陣内右サイド、キックインから始まったプレーから流れる様なパスが通る。西谷、稲葉、清水、そしてまた稲葉へ。稲葉がゴール前へとパスを入れると、最後はファーへ走り込んだＮＯ１６岡山和馬のシュートがネットの形を変えてしまう。
【町田１－１すみだ】<２０分１９秒：ＮＯ１６：岡山和馬>
後半開始早々のゴールがすみだのモチベーションを上げ、すみだがボールを動かす場面が増えていく。プレスに関しても同じだ。ハイプレッシャーが町田選手たちの判断力を鈍らせ、ミスを誘う。苦しい時間帯が続いた。
悪い流れが続く。２６分、町田陣内で与えてしまったフリーキックの場面から、「真の意図」を実現させないが為に出した足がオウンゴールを生んでしまう。
【町田１－２すみだ】<２５分５５秒：オウンゴール>
しかし、ここから流れを変えることが出来るのが今の町田だ。滝田のシュートで得たコーナーキックの場面でのキッカーは滝田学。彼が中央へと入れたボールに本田が合わせ、スコアボードの得点表示を「２」に変えた。
【町田２－２すみだ】<２７分４７秒：ＮＯ６：本田真琉虎洲>
町田が流れを掴む。すみだの攻撃権を奪った滝田から金山、中井と繋ぎ、ゴールを目指すが、ここで中井の前に現れるのが、この試合のキーマン守護神清家だ。
次は左サイドをボラが突破し、清家との１対１の場面を作り出す。清家をかわしてのシュートを試みたボラだったが、彼の手がボールの行く手を阻む。素晴らしいセービングに会場から拍手が沸き起こる。
決定的な場面は作り出していた。だが、スーパーセーブが常に追加点を許さない状況の中、３点目をスコアボードに刻み込んだのは、すみだだった。
町田ゴール前でボールを受けたＮＯ８太見寿人のポストプレーから落とされたボールにＮＯ４諸江剣語が全身の力を込める。太美からの力も加えた渾身のシュートが町田ゴールをくの字に変えた。
【町田２－３すみだ】<３３分１０秒：ＮＯ４：諸江剣語>
残り時間は６分もある。決定機を作り出せている町田にとっては肩を落とす時間帯ではない。しかし、清家を中心としたすみだディフェンスのパフォーマンスが素晴らしい。１対１の場面を作り出したＮＯ２０原辰介、パワープレーでのゴレイロとしてピッチに入ったＮＯ１６篠崎隆樹、滝田、ボラ、横江のシュートがすみだゴールへと向かうが、ことごとく弾き返されてしまう。
時間が無くなっていく。なんとかパワープレーを実施する場面を作り出したい町田だったが、すみだ選手たちは高いキープ力とパスワークでそれを作らせない。
残り時間２秒、篠崎の左足を離れたボールがゴールへと向かうが、この場面でもネットは揺れることは無く、試合終了のブザーが鳴り響いた。
後半スコア【町田１－３すみだ】
合計スコア【町田２－３すみだ】
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オーシャンアリーナで行われたアウェイ２連戦の戦績は０勝２敗の２連敗となってしまった。だが、内容は悲観すべきものでは無い。
「次だ！！ 次！！」こういった言葉を何度言ったことだろう？ 敗戦は、チームを形成するすべての人々にとって「骨身に応える」ことだ。勝負ごとには、いつでも結果が訪れる。戦う事をやめれば、それ程楽なことは無いのかもしれない。けれども、戦う事を続けてしまう人々がいる。何故だろう？
応えは一つではない。面白いものにはたくさんの理由があるものだ。「フットサルという競技の面白さの一つ」のように。
苦労をしてこそ、得る事が出来た時の達成感、成功体験。成功体験をした人間は強くなる。失敗もまた、人を強くする要素だ。
残り試合数「７」。リーグ戦のゴールが見えてきた。
すみだがすぐ横にいる。そして今、彼らは追い抜きを試みている。だが、黄色の戦士たちは、この正念場で必ずや私たちの期待に応えてくれるに違いない。
「勝利を目指し走れ！！」
「勝て！ ペスカドーラ町田！」
写真：橋本健（はしもとたけし）
記事：早川治（はやかわおさむ）
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