【マッチレポート】
「前半戦」
パスワークの上手い浦安の持ち味を消す為、町田は浦安陣内から激しくプレッシャーをかけ続ける。
ファーストプレス、連動してのセカンドプレス、各選手のハイプレッシャーが相手選手のパスミスを誘い、インターセプトの回数を量産させた。
ボールを奪えば、決定機を作り出すことにも成功する。室田祐希がボレーシュートでゴールを狙うが、クロスバーに跳ね返されてしまう。
室田は更に魅せる。次は原辰介とのコンビプレーから浦安ゴールへと向かうが、得点を奪うには至らない。
ハーフまで引いてのマンツーマンディフェンスで対応する浦安。それに対し、町田は得意のクアトロでボールを動かしながらチャンスを窺うという展開が続く。
クアトロは町田の代名詞とも言える戦術だ。しかし、代名詞はそれだけではない。もうひとつ、町田には数多くの得点シーンを作り出している戦術がある。それはセットプレー。
審判の長いホイッスルが鳴り、ファールによってランニングプレーが止まれば、瞬時に岡山監督はその場面に応じたセットプレーメンバーをピッチ内へと送り込む。ファールの場面だけではない。時にはコーナーやキックインの場面でも「タイムアウト」を有効に利用して「貴重な1点」を奪いに行く。
9分、長い笛の音が会場に鳴り響く。浦安のファールだ。レフェリーの判断は直接フリーキックによる試合再開。
岡山監督が動く。浦安陣内で得たFKの場面でのキッカーは横江怜。
日本を代表するゴレイロ、藤原潤からゴールを奪うのは難儀なことだ。
「では、どうすれば良いのか?」
横江の右足からボールが放たれる瞬間、金山友紀が名手の前に入る。そこから得られる結果は様々だ。@ゴレイロの視界に入り、ボールが放たれる瞬間のキックフォームによって想像出来る「シュートコースの予想」の邪魔をする。Aゴレイロの前でワンタッチし、軌道を変えてゴールを狙う。
書き出せば他の様々なパターンがある。フットサルにはオフサイドがない。だからこそ、あらゆる可能性が増えていく。
横江の右足を離れたシュートは金山の横を通り過ぎた後、そのままゴールネットへと吸い込まれていった。
【町田1−0浦安】<8分28秒:横江怜>
浦安も日本代表のスピードスターである加藤竜馬、そして、今シーズン湘南から移籍した元日本代表の小野大輔を中心に町田ゴールへと向かうが、決定機を多く作り出したのは町田。
宮崎貴史、森谷優太、中井健介、滝田学が浦安ゴールへと向かい、会場を沸かせるシーンを何度も演出するが、浦安の守護神藤原潤がゴールを許さない。
町田がボールを支配した前半戦と言える内容だった。しかし、前半ラスト59秒、スコアを動かしたのは浦安。中島孝から裏のスペースへと抜けだした小野大輔へと素晴らしいパスが通る。小野は抜群の左足コントロールで利き足へとボールを動かすと、右足を振り抜き、町田ネットを揺らすことに成功した。
【町田1−1浦安】<19分01秒:小野大輔>
前半スコア【町田1−1浦安】
「後半戦」
チャンスは数多く作り出せていた。あとは結果のみだ。この試合内容で大切なことは常にリードする展開にすること。
後半早々20分50秒、室田祐希がドリブルで浦安ゴールへと向かうと、右サイドを駆け上がった原辰介へとパスを通す。相手ディフェンスとの競り合いからボールが中央ゴール前へとこぼれた瞬間を中井健介は見逃さなかった。
中井が右足を振りぬく。浦安ネットが大きく揺れた。
【町田2−1浦安】<20分50秒:中井健介>
勢いに乗りたい町田だったが、浦安も黙ってはいない。
自陣内で与えてしまった間接FKの場面、キッカー荒牧太郎の右足がオウンゴールを誘い、またも同点にされてしまう。
【町田2−2浦安】<21分35秒:オウンゴール>
浦安の勢いが増す。ここからが今試合大きな分岐点となった。ここで浦安が得点を奪えば、また違った試合内容になったことだろう。しかし、町田は粘り強く戦い続ける。
篠崎隆樹からのパスを受けた横江怜のシュートはバーに弾き返されてしまうが、19分、左サイドで得たキックインの場面で滝田学、中井健介のホットラインが魅せる。
右サイドに空いたフリースペースへと中井が走りこむ。そこへピンポイントのパスを通すのが滝田学だ。
中井の強烈な右足ボレーが浦安ネットに突き刺さる。サポーターは立ち上がり、両手を天に向かって突き上げる。黄色のタオルが何度も回り続けた。
【町田3−2浦安】<29分12秒:中井健介>
更に36分、浦安の攻撃を奪った滝田から右サイドを突破した中井へとパスが通る。最後は中井が中央ゴール前へとフリーで走りこんだ原へとパス。原は胸でボールをゴールへと押し込んだ。
【町田4−2浦安】<35分12秒:原辰介>
失点直後に浦安米川正夫監督はタイムアウトを申請。パワープレーを敢行するが、その後も町田は本田真琉虎洲の突破等でチャンスを作り出す。
しかし、浦安も元日本代表の小宮山友祐を筆頭に気迫溢れるプレーの連発で追加点を許さない。
どのような状況になったとしても、最後の最後まで諦めない浦安選手たちに結果がついてくる。残り時間28秒、小宮山友祐のヘディングシュートで1点差まで詰め寄った浦安だったが、ホームの大歓声の後押しを受けた町田が黄金の昇り龍の追撃を退け、ホーム3連勝の瞬間を手に入れた。
【町田4−3浦安】<39分32秒:小宮山友祐>
後半スコア【町田3−2浦安】
合計スコア【町田4−3浦安】
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平日のナイターゲームにも関わらず、会場に駆けつけてくれたフットサルファンの観客数は1221人。
「熱い試合約束します」この言葉通りのパフォーマンスと気持ちを見せた中井健介は、ファンに深々と頭を下げ、感謝の気持ちを伝えにサポーターのもとへと向かった。
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苦しいシーズンのスタートだった。しかし、歯車が噛み合っていなかったという訳ではない。勝負というのは、ちょっとしたことで未来が変わっていくものだ。
良いリズムが聴こえてきた。これからはそのリズムに皆が乗っていけるかが大切になって来る。
次節はアウェイでアグレミーナ浜松との対戦だ。7月31日(日)浜松アリーナにて19時キックオフ。町田らしさを魅せ、内容と結果の両方を手に入れよう。その為にはサポーターの協力が不可欠だ。
「勝て! ペスカドーラ町田」
写真:橋本健(はしもとたけし)
記事:早川治(はやかわおさむ)
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