【マッチレポート】
Fリーグ2013/2014シーズン、室田祐希と森岡薫は同色のユニフォームを身に纏い、オーシャンアリーナを本拠地に戦いを続けていた。
当時の森岡について、過去に行ったインタビュー内で室田はこう語っている。
室田:「名古屋でも日本代表でも一緒にプレーさせてもらいましたが、本当にお世話になった人です。名古屋に移籍した時、薫さんは初めての移籍で何も分からない僕のことをプライベートでも誘ってくれました。食事に連れて行ってくれたり、いろいろ教えてくれたり・・・。薫さんのお蔭で名古屋でやれたと言っても過言ではないです」。
同時期に行ったインタビュー内での質問「森岡選手から見た室田選手」について、森岡は室田についてこうコメントしている。
森岡:「元気があり、勢いのある選手です。彼はリカル(ポルトガル代表:リカルジーニョ選手)のように実戦で挑戦し、成功させて実力を上げていくことの出来る選手です。ドリブルもスピードがあって良いと思います。加えて、ここ最近は自分だけではなく、相手を活かして突破するというレベルも高くなってきています。名古屋で一緒にプレーしていた時の彼と、今の彼は違う選手ですね」。
もうひとつ、室田選手がインタビュー内でコメントした言葉を書きたいと思う。
室田:「実は名古屋でも日本代表でも、なかなか同じセットでピッチに立つことは出来なかったんです。でも、最近は同セットでプレーする機会が増えてきていて、すごく楽しいですね」。
「前半戦」
今シーズン初の名古屋戦、先に決定的なチャンスを作りだしたのは町田だった。しかし、結果は「0対8」の大敗。キャプテン森岡薫のフットサル哲学のひとつ、「決めれば勝つ。決めなければ負ける」というコメントが頭をよぎるシーンから試合が動き出す。
森岡からのパスを受けた室田がドリブル突破から右足を振り抜く。名手関口優志の右肩をかすめ、名古屋ゴールへとボールが向かうが、クロスバーに弾き返されてしまう。こぼれ球にいち早く反応する室田。だが、今度は関口が立ちはだかる。
名古屋が町田陣内からハイプレスを続けてくる。激しいプレスを受けながらも町田はチャンスを作り出していった。
その中でも決定機を量産したのがダニエルサカイだ。右サイドを突破してからゴレイロ関口との1対1の場面。横江怜からのキックインを受けて右足の強烈なシュート。宮崎貴史からのパスを巧みな身体の使い方でディフェンスをかわしてのフィニッシュ。
突破までは成功していた。だが、得点を奪うには至らない。
流れは悪くない。しかし、決定機をものに出来ないという苦しい状況が続く中、今度は名古屋がカウンターから決定機を作り出す。
名古屋陣内、町田のボールを奪ったラファがカウンターからイゴールと1対1の場面を手に入れる。ここでの失点は確実に大きな意味を持つ。大歓声と悲鳴が混ざり合う中、右拳を突き上げたのは守護神イゴールだった。
前半スコア【名古屋0−0町田】
「後半戦」
25分、待ちに待った瞬間を手に入れたのは町田だった。名古屋陣内、ファールを受けた宮崎が手に入れたフリーキックの場面、ボールの横には篠崎隆樹、名古屋ゴールに向かい、正面には森岡が立つ。
レフェリーの笛が鳴る。このリスタートから始まる攻撃パターンの点(選手)と点(選手)を繋ぐ線を描いてみる。様々なバリエーションが出来るポジションに各選手が立っている。
キックフェイントを入れた後、篠崎がボールから離れていく。ゴール前では名古屋選手の裏のスペースから経験豊富な金山友紀が顔を出す。森岡の右足を離れたボールの軌道をゴール前で変えた金山のシュートが名古屋のオウンゴールを誘った。
【名古屋0−1町田】 <24分34秒:オウンゴール>
待望の「結果」を手に入れた町田は勢いを手に入れる。先制点から僅か29秒後、名古屋選手の裏のスペースへとフリーで抜け出した室田が右サイドでボールを持つ森岡にジェスチャーを送る。ゴール前の状況を確認した森岡は最後尾にポジションを取るダニエルサカイへとパス。そのボールの動きが室田を更に優位な状況へと変えた。
名古屋4人のフィールドプレイヤーが完全にボールウォッチャーになる。その瞬間を見逃さないのがダニエルだ。森岡からのボールを受けたダニエルがダイレクトでゴレイロ関口の前で待つ室田へとパス。スローからクイックへ。完璧な緩急から室田のテクニカルなゴールが生まれた。
【名古屋0−2町田】 <25分03秒:室田祐希>
名古屋がパワープレーを開始する。実力派揃いの名古屋のパワープレー攻撃は脅威だ。しかし、パワープレー時には「どちらが有利」という言葉は当てはまらない。「どちらも大きなリスクを背負っている」という言い方の方が正しいのではないだろうか?
根比べの時間帯が続く中、39分、名古屋がパワープレー攻撃を成功させる。
左サイド、リカルジーニョからセグンドで完全にフリーとなったラファへとパスが通る。ラファが左足で合わせたシュートが町田ネットに突き刺さってしまう。
【名古屋1−2町田】 <38分22秒:ラファ>
残り時間1分38秒。失点直後、岡山監督はタイムアウトを申請。ベンチへと集まった選手たちが仲間を鼓舞し合う。
ゴレイロ水谷祐紀が大声を出し、両手を叩き続ける。各選手が大きく頷き、残り時間で「行うべきこと」を確認し合う。
「ペースカドーラ!!」「ペースカドーラ!!」遠く名古屋の大地まで駆けつけたサポータたちの声援とドラム音がアリーナ内に響き渡る。「根比べ」の最終段階だ。
心からの応援はサポーター席以外の町田サポーターにも火をつけた。アリーナ内、様々な観客席で応援を行う町田サポーターたちも手を叩き続ける。
残り時間3秒、フットサル日本代表西谷良介の強烈なシュートが町田ゴールへと向かう。だが、イゴールが素晴らしい反応でゴールを許さない。
しかし、ここで終わらないのが名古屋というチームだ。こぼれ球に反応した齋藤功一の右足シュートが町田ゴールへと向かう。だが、齋藤の放った強烈なシュートはクロスバーの僅か上を通過していった。
後半スコア【名古屋1−2町田】
合計スコア【名古屋1−2町田】
・・・・・
名古屋のチームメイトだった室田と森岡。
あれから4年、ふたりは「黄色の戦士」となり、リーグ制覇という目的地へと向かっている。
2017年9月17日現在リーグ3位、首位名古屋との勝ち点差「5」という位置まで順位を上げて来た町田の次なる対戦相手は、今シーズン台風の目となっている湘南ベルマーレ。前節では「1対5」と大敗を喫している。
「直接対決はあと2回ある。どれだけ良いコンディションで戦えるかということが大切」。今シーズン、湘南との初対戦後にキャプテン森岡薫がコメントした内容が結果へと変わる試合のキックオフは、2017年9月17日(日)16時だ。
アウェイ小田原アリーナで「勝利を目指し走れ!!」
「勝て! ペスカドーラ町田」
・・・・・ 第12節を終えた時点での順位等
順位:12チーム中3位
勝ち点:25 − 首位名古屋オーシャンズ(以下名古屋):31
勝敗数:8勝1分3敗 − 名古屋:10勝1分1敗
総得点数:44点 − 名古屋:58点
総失点数:30点 − 名古屋:18点
得失点差:+14 − 名古屋:+40
写真:橋本健(はしもとたけし)
記事:早川治(はやかわおさむ)
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